大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(ラ)173号 決定

一、一件記録中の相手方会社の閉鎖登記簿謄本によると、相手方会社は昭和三八年九月二〇日株主総会の決議により解散し、同月三〇日その旨の登記をし、昭和三九年二月一五日清算を結了したとして、同月二八日その旨の登記をしたことが認められる。しかしながら、清算結了の登記がすんだ場合でも、会社の財産に属する債権が残存していて清算人のすべきことが終つていないときは、実際は清算が結了していないのであるから、会社はなお存続していると解するのが相当である。したがつて、清算結了の登記がすんだ一事によつて、直ちに、相手方会社は人格を失なつたと断ずることはできない。また、記録によると、新潟地方法務局所属公証人赤木寿夫作成昭和三四年(甲)第一七四八号金銭消費貸借公正証書にもとづく相手方会社の抗告人に対する債権に関しては、右公正証書の執行力の有無をめぐつて、抗告人と相手方会社との間に紛争が生じ、両者間に昭和三四年一〇月以降訴訟が係属し、相手方会社の前示清算結了登記後である昭和四〇年一月一六日に上告審の判決があつたことが認められるから、右債権は特別の事情の認められない本件では、相手方会社の債権として残存しているとみるのが相当である。会社がみずから清算を結了したとしている以上、反証がない限り、右債権は残余財産として株主のだれかに分配されたものと推定すべきであるという抗告人の主張は、特殊な見解であつて、採用することができない。

二、つぎに、抗告人は商法第一四条を援用して、相手方会社が仮に清算未了であつても、清算結了という事実の不実であることをもつて抗告人に対抗することができないと主張するけれども、商法第一四条は登記された事項を真実であると信じて何かをやつた第三者に対しては、会社は、登記された事項は実は真実ではないと主張することはできないという規定である。本件において抗告人は登記された清算結了という事実が真実であると信じて何かをやつたというのではなく、逆に、相手方会社が存続しているものと信じそう主張して前記訴訟で上告審にいたるまで争つたとみるほかないのであるから、右法案は本件においては適用の余地がないものといわなければならない。

三、記録によると、抗告人は相手方会社との間の強制執行停止命令申請事件(新潟地方裁判所昭和三六年(モ)第一一三号)につき保証として金三万円を供託したが、本案訴訟が抗告人の一部敗訴で確定したので、民事訴訟法第五一三条第一一五条にもとづき、昭和四〇年三月八日新潟地方裁判所に担保取消決定の申立をし、同裁判所は同日相手方会社に対し、七日の期間をきつて権利行使の催告を発し、同催告書は同月一〇日相手方会社に到達したところ、相手方会社は、抗告人に対する金銭消費貸借公正証書の執行力ある正本にもとづき、同裁判所に申請して、同月一六日、抗告人の国に対する保証金(前記金三万円)取戻請求権に対する差押、転付命令を得、これを理由として、同日、同裁判所に担保取消決定の申立をしたものである。ところで、民事訴訟法第一一五条にいう「担保を供したる者」は、裁判所から担保を供することを命ぜられて担保を供した者の一般承継人及び特定承継人を含むものと解するのが相当であるから、抗告人の供託金取戻請求権に対して差押転付命令を得てその請求権を取得した相手方会社は右にいう担保供与者として担保取消の申立権を有し、その反面抗告人は右申立権を有しないものといわなければならない。そして供託物取戻請求権に対して担保権をもつ者が、右請求権につき差押転付命令を得て担保取消の申立をする場合においては、その者は担保権を放棄したとみるべきであるから、抗告人の保証取消決定の申立を却下し、相手方会社の申立を認容した原決定には違法はない(もとより相手方としては抗告人主張のような承継の関係を明らかにすることによつて担保取消決定を得ることも可能であるが、常にそのような手続によらなければならない理由はない。抗告人主張の、二重申立として相手方の申立を却下すべしという理論は理解することができない。)。

(新村 中田 高橋)

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